教育・研修

専門研修医プログラム

本プログラムの研修カリキュラム到達目標

1. 一般目標

安全で質の高い麻酔科関連分野の診療を適切に実践できる専門医を育成する。
具体的には下記の4つの資質を修得する。

  1. 十分な麻酔科領域,および麻酔科関連領域の専門知識と技量
  2. 刻々と変わる臨床現場における,適切な臨床的判断能力,問題解決能力
  3. 医の倫理に配慮し,診療を行う上での適切な態度,習慣
  4. 常に進歩する医療・医学を則して,生涯を通じて研鑽を継続する向上心

2. 個別目標

目標1 基本知識

麻酔科診療に必要な下記知識を習得し,臨床応用できる.具体的には公益法人日本麻酔科学会の定める「麻酔科医のための教育ガイドライン」の中の学習ガイドラインに準拠する.

  1. 総論
    • 麻酔科医の役割と社会的な意義,医学や麻酔の歴史について理解している.
    • 麻酔の安全と質の向上:麻酔の合併症発生率,リスクの種類,安全指針,医療の質向上に向けた活動などについて理解している.手術室の安全管理,環境整備について理解し,実践できる.
  2. 生理学:下記の臓器の生理・病態生理,機能,評価・検査,麻酔の影響などについて理解している.
    • 自律神経系
    • 中枢神経系
    • 神経筋接合部
    • 呼吸
    • 循環
    • 肝臓
    • 腎臓
    • 酸塩基平衡,電解質
    • 栄養
  3. 薬理学:薬力学,薬物動態を理解している.特に下記の麻酔関連薬物について作用機序,代謝,臨床上の効用と影響について理解している.
    • 吸入麻酔薬
    • 静脈麻酔薬
    • オピオイド
    • 筋弛緩薬
    • 局所麻酔薬
  4. 麻酔管理総論:麻酔に必要な知識を持ち,実践できる
    • 術前評価:麻酔のリスクを増す患者因子の評価,術前に必要な検査,術前に行うべき合併症対策について理解している.
    • 麻酔器,モニター:麻酔器・麻酔回路の構造,点検方法,トラブルシューティング,モニター機器の原理,適応,モニターによる生体機能の評価,について理解し,実践ができる.
    • 気道管理:気道の解剖,評価,様々な気道管理の方法,困難症例への対応などを理解し,実践できる.
    • 輸液・輸血療法:種類,適応,保存,合併症,緊急時対応などについて理解し,実践ができる.
    • 脊髄くも膜下麻酔,硬膜外麻酔:適応,禁忌,関連する部所の解剖,手順,作用機序,合併症について理解し,実践ができる
    • 神経ブロック:適応,禁忌,関連する部所の解剖,手順,作用機序,合併症について理解し,実践ができる.
  5. 麻酔管理各論:下記の様々な科の手術に対する麻酔方法について,それぞれの特性と留意すべきことを理解し,実践ができる.
    • 腹部外科
    • 腹腔鏡下手術
    • 胸部外科
    • 成人心臓手術
    • 血管外科
    • 小児外科
    • 小児心臓外科
    • 高齢者の手術
    • 脳神経外科
    • 整形外科
    • 外傷患者
    • 泌尿器科
    • 産婦人科
    • 眼科
    • 耳鼻咽喉科
    • レーザー手術
    • 口腔外科
    • 臓器移植
    • 手術室以外での麻酔
  6. 術後管理:術後回復とその評価,術後の合併症とその対応に関して理解し,実践できる.
  7. 集中治療:成人・小児の集中治療を要する疾患の診断と集中治療について理解し,実践できる.
  8. 救急医療:救急医療の代表的な病態とその評価,治療について理解し,実践できる.それぞれの患者にあった蘇生法を理解し,実践できる.AHA-ACLS,またはAHA-PALSプロバイダーコースを受講し,プロバイダーカードを取得している.
  9. ペイン:周術期の急性痛・慢性痛の機序,治療について理解し,実践できる.

目標2 診療技術

麻酔科診療に必要な下記基本手技に習熟し,臨床応用できる.具体的には日本麻酔科学会の定める「麻酔科医のための教育ガイドライン」の中の基本手技ガイドラインに準拠する.

  1. 基本手技ガイドラインにある下記のそれぞれの基本手技について,定められたコース目標に到達している.
    • 血管確保・血液採取
    • 気道管理
    • モニタリング
    • 治療手技
    • 心肺蘇生法
    • 麻酔器点検および使用
    • 脊髄くも膜下麻酔
    • 鎮痛法および鎮静薬
    • 感染予防

目標3 マネジメント

麻酔科専門医として必要な臨床現場での役割を実践することで,患者の命を助けることができる.

  1. 周術期などの予期せぬ緊急事象に対して,適切に対処できる技術,判断能力を持っている.
  2. 医療チームのリーダーとして,他科の医師,他職種と協力し,統率力をもって,周術期の刻々と変化する事象に対応をすることができる.

目標4 医療倫理,医療安全

医師として診療を行う上で,医の倫理に基づいた適切な態度と習慣を身につける.医療安全についての理解を深める.

  1. 指導担当する医師とともにon the job training環境の中で,協調して麻酔科診療を行うことができる.
  2. 他科の医師,コメディカルなどと協力・協働して,チーム医療を実践することができる.
  3. 麻酔科診療において,適切な態度で患者に接し,麻酔方法や周術期合併症をわかりやすく説明し,インフォームドコンセントを得ることができる.
  4. 初期研修医や他の医師,コメディカル,実習中の学生などに対し,適切な態度で接しながら,麻酔科診療の教育をすることができる.

目標5 生涯教育

医療・医学の進歩に則して,生涯を通じて自己の能力を研鑽する向上心を醸成する.

  1. 学習ガイドラインの中の麻酔における研究計画と統計学の項目に準拠して,EBM,統計,研究計画などについて理解している.
  2. 院内のカンファレンスや抄読会,外部のセミナーやカンファレンスなどに出席し,積極的に討論に参加できる.
  3. 学術集会や学術出版物に,症例報告や研究成果の発表をすることができる.
  4. 臨床上の疑問に関して,指導医に尋ねることはもとより,自ら文献・資料などを用いて問題解決を行うことができる.

3. 経験目標

研修期間中に手術麻酔の充分な臨床経験を積むとともに、麻酔科関連領域である集中治療、ペインクリニック、緩和医療の臨床を経験する。また、研修早期からリサーチマインドを身につけていくため、国内及び国内での学会発表する経験するとともに、邦文又は英文での論文作成を経験する。

1) 手術麻酔症例

通常の全身麻酔・硬膜外麻酔・脊髄くも膜下麻酔・神経ブロックの症例経験に加え,下記の所定の件数の特殊麻酔を担当医として経験する.ただし,帝王切開手術,胸部外科手術,脳神経外科手術に関しては,一症例の担当医は1人,小児と心臓血管手術については一症例の担当医は2人までとする。

  • 小児(6歳未満)の麻酔 25症例
  • 帝王切開術の麻酔 10症例
  • 心臓血管外科の麻酔(胸部大動脈手術を含む) 25症例
  • 胸部外科手術の麻酔 25症例
  • 脳神経外科手術の麻酔 25症例

尚、本症例数は最低必要数であり、可能な限り多数の症例、重症例、特殊症例、緊急症例を経験することを目標とする。

2) 集中治療管理

術後管理を含む集中治療を経験することは、麻酔管理の質的向上においても重要であり本プログラムでは集中治療管理の経験を推奨する。集中治療の研修として以下を選択できる。

  • 集中治療専門施設における集中治療部(奈良医大)での12週間の研修
  • 麻酔・集中治療管理を含めた総合研修(奈良医大)での1年間の研修
  • 基幹研修施設、関連研修施設における集中治療の研修。

以下の施設で集中治療の管理の経験をすることができる。
市立奈良病院、ベルランド総合病院、東大阪市立総合病院、国立循環器病センター、大阪府立母子保健総合医療センター。

集中治療の研修では以下の管理を経験する。
人工呼吸、鎮痛・鎮静、重症感染症、ARDS,敗血症、DIC、心不全、急性肝腎不全、血液浄化法、神経集中治療、小児集中治療。

3) ペリニックインク

痛みの治療は麻酔科専門医に必須の知識であり、専門医取得に必要な知識を獲得するためのペインクリニック研修を推奨する。ペインクリニックの研修として以下を選択できる。

  • 麻酔・ペインクリニックを含めた総合研修(奈良医大)での1年間の研修
  • ペインクリニック認定施設におけるペインクリニックでの8週間の研修(奈良医大)

ペインクリニックの研修では以下を経験する。
痛みの評価、痛みの薬物療法、神経ブロック療法、帯状疱疹、脊椎疾患、神経障害性疼痛、関節疾患、脳脊髄液減少症。

4) 緩和医療

緩和ケアは麻酔科専門医に必須の知識であり、専門医取得に必要な知識を獲得するための緩和ケアでの研修を推奨する。

  • 麻酔・ペインクリニックを含めた総合研修(奈良医大)での1年間の研修
  • 緩和ケアでの8週間の研修(奈良医大)

緩和ケアの研修では以下を経験する。
がん疼痛緩和、症状緩和、精神的支援、社会的支援、、ホスピス(国保中央病院など)、在宅ケア。

5) リサーチマインド

以下の経験を目標とする。

  • 国内学会発表 年1回
  • 国際学会発表 計1回
  • 邦文論文作成 1篇
  • 英文論文作成 1篇

緩和ケアの研修では以下を経験する。
がん疼痛緩和、症状緩和、精神的支援、社会的支援、、ホスピス(国保中央病院など)、在宅ケア。

7.各施設における到達目標と評価項目

各施設における研修カリキュラムに沿って,各参加施設において,それぞれの専攻医に対し年次毎の指導を行い,その結果を別表の到達目標評価表を用いて到達目標の達成度を評価する.

  • 概要と特徴
  • プログラムの運営方針
  • 研修施設の指導体制と前年度麻酔管理症例数
  • 募集定員
  • プログラム責任者
  • 研修カリキュラムの到達目標